どうも部員Xです。
今回は下水道ニュースレビューやっていこうと思います。先日、ヤフーニューストップになぜか「下水処理、広域管理で省力化 監視システムに互換性 国交省が本格検討」というトピックがありましたw
下水道ニュースに飢えていた私としてはキタ――(゚∀゚)――!!って話なので、取り上げたいと思います。
というか、実は私、この手の話の専門家と言ってもイイ業界人ですw
あまりマニアックな話をしても仕方ないので、ざっくり雑感を書いて行こうかなと。
記事の概要
「国土交通省は、市町村ごとに運用している下水処理場を広域的に管理するシステムの実用化に向け、本格的な検討に入った。
処理場のシステムは市町村によって異なる場合が多いが、大規模な改修をしなくても互換性を持たせられるよう、メーカーを交えて技術開発中。1カ所の処理場から遠隔での監視制御を可能とすることで、省力化を後押しする狙いだ。
国交省は2021年度予算概算要求に関連経費を計上し、モデル自治体で実証実験をする方針。23年度以降の実用化を目指している。」
時事通信 2020年07月25日07時47分
と、まぁ書いてある通りなんですが、市町村跨ぎで下水処理場を管理運営していこうという話ですね。
関連経費を計上、とありましたので、ちょっとR02年度予算概算要求の資料を見てきたんですが、たぶんこれに含まれているはずです。
https://www.mlit.go.jp/page/content/001304337.pdf
https://www.mlit.go.jp/page/content/001304299.pdf
資料内にある、下水道事業関連事業費の②効率的な下水道事業の推進 188億円の内に含まれていると思います。
※概算要求なので、本予算でなんぼついたのかはわかりません。
その188憶のウチ、なんぼほどついているかわかりませんがそこそこの予算がついているようですね。
なぜ下水処理の広域管理を進めたいのか
ぶっちゃけ、「金がない」ので、省力化!効率化!っていうのは大義名分で、実質的には節約です。もう少しかっこよく言うと、コスト削減。
下水道事業全体の状況として、昭和最晩年~平成初期に普及させた地方の下水処理場が更新時期を迎えていること、そしてその当時建設に関わっていた自治体職員の退職時期が重なっていること、そしてそもそも人口減少、緊縮財政があり、事業全体に金が掛けられなくなっている、という面があります。
そのため、命題としてあるのが、
「金を掛けないで施設の更新並びに、下水処理の品質を維持すること」
となります。
それを達成するための手法として、広域管理というやり方があると。そして広域管理の核となるのが監視制御システムってことです。
監視制御システムの互換性とは
まず、下水道の監視制御システムなんですが、ぶっちゃけあまり大したものではないので、やろうと思えばすぐにでも互換性を持たせたシステムはできるはずです。
あまり大したものではない、というか製造業などの生産プロセスのFA制御に比べると、時間、制御量(精度)ともに二桁くらい違うわけです。
最低でも0.1秒単位、mm単位で制御しているFA制御に比べ、下水道の水処理制御は1分単位、cm単位での制御で充分で、むしろ時間応答性がものすごく悪いので、頻繁な入出力の変化をできるだけなくす制御をしています。
なので、基本的には古典的なリレーシーケンス(onoffの組み合わせで制御できる)で制御を組んでいます。アナログ制御もあるんですが、水位一定制御などだけで、あまり難しい制御ではありません。
どちらかというと、壊れるのが怖いので、保守的なやり方ですね。個人的にも下水処理場の監視制御システムはハードリレー(シーケンサを使わない)ベースでよいと思ってます。
なお、機械設備単体の制御(脱水機や濃縮機など)はmm単位、0.1秒単位の制御が行われています。これについては、メーカ以外が触ると火傷する領域で、互換性を持たせる、という話には入ってきません。
下水処理場の監視制御システムに互換性を持たせる領域は、自動車の運転で例えると、アクセル開度、ブレーキ踏力、ハンドル舵角、サイドバックミラーの見え方、を共通化するという話で、エンジン自体の制御(年調や点火タイミングとか)に互換性を持たせるわけではない、ということです。
「下水処理場の監視制御システムの互換性」を具体的に言うと、
前提として、自動制御自体は各処理場ローカル側で行う(技術的には、自動制御を広域管理の拠点処理場で一括で組むことも可能です)
そのうえで、
・監視に必要な信号を各処理場のPLC(シーケンサは三菱電機の商標なので、PLCと書いたほうがいいかなと)で収集し、それを互換性のプロトコルで、伝送する。
この伝送プロトコルに互換性を持たせる、ということになります。
・・・この伝送プロトコルに互換性を持たせるという話なんですが、ぶっちゃけ、規格としてはすでにあるんです。
国産だとFL-netとかね。
でも、互換性を持たせてしまうと弊害もあって、いままではあまり使われてなかった、というか、互換性のあるプロトコルを使っていても、その互換性を積極的に使えていなかった、という背景があります。
いままで互換性が生かせなかった理由
互換性を生かせなかった理由というか、下水道業界における電気設備工事の特殊性について先に説明します。
その特殊性とは、「下水処理場の電気設備は初期工事を受注した会社がその後の工事をすべて請け負う」という不文律に近い慣例があります。
当初以降の工事についても、競争入札ですので、競争性はあるのですが、初期工事を受注した1社が、その後の電気設備工事を行うことがほぼほぼです。大きな処理場では、水処理と汚泥処理で複数社入っていることもありますけど。
これには電気設備工事特有の理由があります。
それは「下水処理場は1度にすべて完成しない」という下水処理場故の理由です。
「え、電気と関係ないじゃん」と思うかもしれませんが、めっちゃ関係あるんです。
下水道事業というのは、管渠の面整備と処理場の処理能力を徐々に大きくしていくという特徴があります。
処理場側は別にいっぺんに作ってもいいんですけど、面整備が追い付かないと「ムダ」になるで、面整備の進捗に合わせて段階的に増設工事を行っていくわけです。
まぁ、たしかに合理的に聞こえますよね、コレは。
で、この増設工事を誰ができるの?って話になるんですが、土建と機械は当初工事以外の会社が普通にできます。
1系は○○社、2系は△△社、3系は□□社・・・みたいな感じで、バラバラでも施工できます
が、電気設備の場合はバラバラにならないことが多いのです。上で書いたように、電気の増設工事も競争入札なので、当初工事以外の会社も入札に参加できるます。
でも、結果としては当初工事を行った会社が増設工事も受注することが圧倒的に多いのです。
その理由なのですが、
・他社の盤を触りたくない
これが理由です。
なんじゃそりゃ、って思うかもしれませんが、トラブル回避のために各社消去法的にそう選択していると思われます。
なぜそういう選択をするのか、というと、
・電気設備の増設工事は、当初(既設)工事で設置した盤の改造を行う必要がある。
→共通で使用する設備があるため、それとの取り合い調整を行う必要がある。汚泥引き抜きポンプとか送風機とか。
→とくにPLCで制御を組んでいる場合はめんどい。
・制御電源や計装電源も同様に、既設設備からもらうことが多い
・そもそも他社の盤図面(展開接続図)を読むのは結構大変
・他社製品の監視装置の改造を行うことがいろいろとめんどい
などなど、正直いってめんどくさいこと、そしてなによりトラブルの原因になることが多いのです
電気的なトラブルは機械と違って、一見すると壊れている箇所やトラブっている箇所がわかりません。
なので、不具合箇所を特定する作業を行っていくのですが、その際に複数メーカの盤が混ざっていると・・・
責任の押し付け合いになるんですよね。こっちは悪くないです、と。その結果、トラブル解決にものすごく時間がかかるわけです。
正直、維持管理側としてもものすごくめんどい。
電気設備工事は大手メーカがやることが多く、地方の処理場だとそもそもトラブル対応に来てくれるまで時間がかかるし(拠点が大都市にしかない)、保守契約をしておかないと金もかかる。
その保守契約も複数のメーカと結ばないと・・とか消耗品が統一できないとか、まぁ維持管理もメンドイと。
その結果として、「下水処理場の電気設備は初期工事を受注した会社がその後の工事をすべて請け負う」ことが多くなるというわけです。いろいろな理由があり、結果としてなっている、と認識してます。
で、で、で、互換性の話になるわけですが(話が長すぎるw)、各処理場ごとに別々のメーカが独自の監視制御システムを設置しているため、今までは互換性をあまり重視してこなかったのです。
というか、仕様書に「通信(伝送)プロトコルは互換性を用いた~」とかにしても、上記で説明した理由により、処理場ごとに1社しか電機メーカがいないので、互換性を持つ必要がないわけで、形骸化してしまうわけです。
では、通信プロトコルで互換性がない場合、どのようにメーカ間で信号をやり取りするかというと(水処理⇔汚泥処理でメーカが違う場合とか)、物理的な接点でやり取りするわけです。
本当は、各々のPLC(シーケンサ)や監視装置同士をダイレクトにつないでやり取りすればいいんですけど(技術的にはできるけど)、やらないんですよね、やっぱ。トラブルの元だから。
PLCのラダープログラムはプログラミング言語としては高度なものではないですが、一応著作権的な概念もあるので、各々のPLCを直接つなげることにやはり各社拒否反応を示している、という背景もあると思います。
「物理的な接点でやり取りする」これの方法は中継端子盤を設置する方法が一般的です。
ただ、この中継端子盤に信号を出すために増幅リレーを設置してアイソレーターを・・・とかまぁめんどいし、無駄といえば無駄。盤数や電気室の面積も取るわけですしね。
ってことで、もっと効率のいい、互換性を持たせられるスキームを作れないかな、というのがこの話の背景と言うわけです。
技術的というより、スキームの話なのかなぁって私は思いますね。
こんなやり方どうですかという提案
やっぱクラウド上にシステムを構築するのがイイと思います。
各社の伝送プロトコルはTCP/IPで動作するモノ(LANケーブル上に載せられて、ルータ跨ぎで伝送できるもの)にする。
そして、クラウド上に各社のプロトコル(当然、同じプロトコルを使う方が望ましい)に対応した監視ソフトを構築する。
監視ソフトは各処理場から上がってくる信号(デバイス番号を信号ごとに割り当ててあるもの)と画面や帳票を結合させる。
こんな感じですかね?
これならローカル側の改造はTCP/IP用の拡張カードインターフェースカードを挿すだけでいいはず(当然細かい設定はありますけど)です。
ただし、問題があって・・・
こういうシステム(クラウド上で各社のプロトコルを一括して取り込める監視ソフト)を作ってしまうと、このシステムもまた1社独占になってしまいそうなんですよね、県単位とかで。
どのメーカでも自由に扱えるものにしないといけない。そんなものができるのかなぁ・・・と。
あと、当初はイイんですけど、増設とか、改築更新の際に見積もりがちゃんととれるのか、とかいろいろと考えないといけないと思います。
広域管理という点で着目すれば、流域や県単位でクラウドシステムを構築するのが理想的です。
おわりに
といろいろ考えてきたわけですが、最後に1つ言いたいのは、現場で維持管理する人員は絶対に必要ということを忘れてはいけないと思います。
監視制御はできるけど、現場でのトラブル対応は必要ですからね。それを誰がやるのかと。
この手の広域化で人員を削減すると、トラブル対応力がめっちゃ落ちます。
「年間に○○回のトラブルしか発生していないのに、この人数は過剰である」
とかそういうことを言う人がおそらく財務部署にいるんだと思いますが、何バカなこと言ってるんだといいたいですね。
河川堤防とか防潮堤などと考え方は一緒なんです。生命保険とかとも一緒。
「ほとんど払い損になるかもしれないけど、備えておかなければいけないモノ」それが現場で実際に手を動かす人たちです。
あくまでも監視制御システムを統合することのメリットとかとは別に考える必要があると思います(「監視室勤務者」を減らすことはできる)。
ってことで、今回は以上です。
めっちゃ長文ですが、ここまで読んでいただいた方、ありがとうございます。
ではまた。
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